「成年後見」制度は、認知症や知的障がい・精神障がいなどにより判断能力が不十分なために、財産侵害を受けたり、人間として尊重されないようなことがないように、後見人が本人の法定代理人として法律面や生活面で、本人をサポートしていく仕組みです。なお、統計によると、85歳以上の高齢者の3~4人に1人が認知症であると言われており、判断能力の不十分な方を保護しようというますます高まっている現状です。
「成年後見」制度は、以下のような場合に活用できます。
1.ひとり暮らしの老後を安心して過ごしたい。施設への入所契約や預金の管理などをお願いしたい。
2.体が不自由で銀行へも行けないが信頼できる親族もいない。
3.高額な健康器具など頼まれると断りきれずに買ってしまう。
4.寝たきりの母の面倒をみて財産管理をしてきたが、他の兄弟から疑われている。
5.老人ホームに入所している父の年金を、姉が勝手に自分のために使っている。
6.両親が死亡した後、知的障がいを持つ子どもの将来が心配。
7.認知症の父の不動産を売却して入院費用にあてたい。
判断能力があるかどうかによって以下のような制度があります。
現在、判断力はしっかりしているが、体が不自由なので今すぐ代理人を付けたい場合など。
(利用例)
・生活費や入院費用の支払い
・不動産の管理 など
現在は元気だが、将来の判断能力の低下に備えて、自ら後見人を指定しておきたい。
(利用例)
・一人暮らしで頼れる親族はいない方
・親族はいるが親族は信頼できない方
(利用方法)
公証人役場で任意後見契約を締結する必要があります。
本人の判断能力が不十分になったときに、家庭裁判所に任意後見人を監督する任意後見監督人を選任する申し立てを行います。任意後見監督人選任の審判がされると、任意後見契約の効力が発生し、任意後見人は、本人から委託された事務について、代理権を行使することができるようになります。
既に、認知症や知的障がい等により判断能力が低下している場合。
判断能力の程度に応じて「補助」・「保佐」・「後見」の制度が利用できます。
(利用例)
・上記3~7の事例のような方が利用できます。
(利用方法)
4親等内の親族から家庭裁判所に対して後見開始の申立てを行う必要があります。 (分類)
補助 → 判断能力が不十分
保佐 → 判断能力が著しく不十分
後見 → 判断能力がほとんどない
後見人として委任したい方との委任契約により委任する範囲や報酬などを決めます。イメージとしては以下のような図となります。注意点としては、任意後見契約や法定後見制度と違って、代理人の業務をチェックするしくみがありませんので、かなり信頼できる人に委任されることをおすすめします。
任意後見契約は判断能力がある元気なうちに、将来のために信頼できる人を後見人として定め、後見人候補者と任意後見契約を締結します。任意後見契約では、支援してほしいこと(財産の管理や病院代の支払い等)を公正証書で具体的に決めておきます。
後見人を引き受けた人は、基本的には依頼した人が認知症などにより、判断能力が低下してきたら、家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申立てを申請し、任意後見監督人が選任されたら、依頼人のために身上監護や財産管理等の委任を受けた事務を開始します。
任意後見監督人が後見人の業務をチェックして家庭裁判所に報告しますので、任意代理契約よりも安全が保障されます。
任意代理と任意後見契約を比較すると以下のような図になります。
法定後見制度は既に、認知症や知的障がい・精神障がい等により判断能力が低下している人が利用できます。支援する範囲が判断能力のレベルによって補助・保佐・後見の三類型に分かれています。支援できることは以下の表のとおりです。
類型 | 支援する人 | 支援できること |
補助 | 補助人 | ・本人が選択した特定の法律行為について代理する ・本人が選択した重要な法律行為に同意したり取消したりする |
保佐 | 保佐人 | ・本人が選択した特定の法律行為を代理したり取消したりする ・民法で定められた重要な法律行為に同意したり取消したりする |
後見 | 成年後見人 | 日常生活に関する行為を除くすべての法律行為を代理したり必要に応じて取り消す。 |
※特定の法律行為とは本人の生活・療養看護および財産に関する法律行為であれば何でもよく、要介護認定の申請なども含まれます。
※重要な法律行為とは、貸金元本の受領や金銭の借入・不動産の処分・新築・増築・賃貸借など民法12条で規定されている法律行為のことです。
任意後見契約は依頼する人と後見人となる人の契約により成立しますが、契約内容が実際にスタートするのは何年先になるか分かりませんし、後見業務がスタートしても依頼者より先に後見人が先に病気になったり死亡したりすることも想定されます。
しかし、個人事務所ではなく法人であれば複数の司法書士がいますので、たとえ一人が亡くなっても継続的に末永くサポートすることができます。また、複数の司法書士がいることにより緊急な事態のときも迅速に対応できますので安心です。
任意後見契約を締結しても、任意後見は判断能力が低下してからスタートしますので、いつから任意後見をスタートさせるかというのは、非常に大事な問題です。その対策として、一般的に任意後見契約の締結とセットで交わされるのが「見守り契約」というものです。
「見守り契約」は、およそ月1回のペースで本人に電話または自宅訪問をして、何か不都合なことは無いか、変わったことは無いかというのを定期的にチェックする(見守る)業務の契約のことです。ホームヘルパーやデイサービスなどの介護サービスを利用されている方は、介護支援員の方から後見人予定者の方へ連絡がくるようにしておけば安心です。まだ、介護サービスを受けていない方は、司法書士法人リーガルシップから毎月決まった日に電話でお話しをして、健康状態・精神状態等に異常がないか、困ったことや不安なことがないかを確認することができます。
介護サービス、任意後見契約などは、生きている間のことです。一人暮らしで親族が遠方にいる方、身寄りの無い方の場合は、亡くなってからのことは、自分では何ともしがたい問題があります。葬儀、納骨、債務弁済、家財道具や生活用品の処分など誰かにしてもらう必要があります。そのような方のために「死後事務委任契約」があります。
なお、委任契約は原則として委任者の死亡によって終了するものですが、当事者である委任者と受任者が「委任者の死亡によっても委任契約を終了させない旨の合意」をすることにより、委任者は受任者に対して短期的な死後の事務を委任することができるとされています。
主な委任内容としては以下のような事務があります。
なお、遺言書の付言事項として、死後事務委任的条項を記載すること(祭祀の主宰者を指定したり、遺言執行者に葬儀や法要等に関する事項を託したり、親族への連絡を希望したり…等)自体は理論的に可能ですが、一般的に遺言書が開示されるのは、葬儀・納骨等の法事がひと通り落ち着いたらというケースが多いので、これでは委任者の意図が確実に実現されない可能性が高くなります。そこで、遺言書では対応できない事項を網羅し、遺言者が死亡した瞬間から対応できるようにするためにする契約が、この死後事務委任契約なのです。
司法書士法人リーガルシップでは、法人のメリットである継続性と複数の司法書士の存在を生かして遺言執行と共に死後事務委任により死亡直後の事務もサポートしております。
なお、詳しいことは公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート http://www.legal-support.or.jp/に掲載されてています。
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