不動産の所有者が法人名義の場合、特有の困難な登記事例が生じることが有ります。
以下の事例をあげて検討してみたいと思います。
ある会社(以下「A社」とします)が所有している不動産を甲さんが購入したとします。
その後、所有者をA社から甲へと変更する登記をしないまま長期間経過してしまいました。甲は、今般その登記をしようと思い、売主であるA社の登記簿を取得しようとしたところ、A社はすでに解散(清算結了)しており、A社の登記簿は取得できませんでした。
A社がすでに存在していない場合は、もう甲への所有権移転登記はできないのでしょうか。
このような場合、主に以下の3つの方法で解決できる可能性が有ります。
【①A社の清算結了前に売買していた場合】
清算人と登記申請を行います。A社を復活させる必要は有りません。
(清算人とは、会社を閉じる前に会社の解散の業務を執行していた人のことです。)
なお、清算人が死亡していた場合は、清算人の選任申立行う必要が有ります。
【②清算結了後に売買していた場合】
A社を復活させ、清算人と登記申請を行います。登記申請完了後は、再度A社の清算結了登記をし、会社登記簿を閉鎖します。
【③A社の会社登記簿が存在しない場合】
登記義務者が行方不明となるため、不在者制度を活用することになります。
このように、法人名義の不動産で、登記が困難になった場合でも、解決できる可能性が有ります。
野口